徹底的に学びにこだわるコワーキングスペース「フューチャー・コワーカーズ」(徳島)

各地のコワーキングスペースを巡り、日本のコワーキングの「今」を体感するコワーキングツアー。そこで見聞したコワーキングのあれやこれやを切り取ってご紹介するコラム、その10回目は、徳島の「フューチャー・コワーカーズ」さんにおじゃまし、運営者である観元 眞人さんにお話を伺いました。
(※取材 2016年4月24日)

フューチャー・コワーカーズ
徳島県 徳島市幸町3丁目13−1 第1相互ビル 2階

驚くべきセミナー開催力

大阪のIT企業のマーケティング担当として全国47都道府県の企業や自治体をサポートしてきた観元さんは、その経験を活かして地元徳島で異業種交流会を興す。月に一回、市の施設を借りて参加費はワンコイン(500円)。ライオンズクラブやロータリークラブなど、経営者のための団体はたくさんあるが、個人事業者やフリーランサー、それに会社員のためのそれがない、と思ったのがきっかけだった。

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そのうち、主にIT系のワーカーが仕事をするために共用するコワーキングをメディアが取り上げるようになる。しかし、観元さんは都会と同じようには徳島ではできないだろうと考えた。
観元さん自身ウェブ・エンジニアではなかったので、そこに特化するとサポートが難しいということもあるが、それよりも起業してからみんなマーケティングや集客の部分で躓いているということ、そしてビジネスには基本的に自分自身を研鑽できるカリキュラムが必要だということ、そこに気づいたからだ。

「学び」をベースに運営したいと考えたんです。やっぱり地方は、場所だけ構えても来ないだろうなというのがあって、交流型でいこうと。月10回〜15回ぐらいを目標に講座を開いて、それを会員さんが相互にやっていく。そういう「学び」をベースに人が集まることをコンセプトにしました。

そうして「フューチャー・コワーカーズ」の前身であるプラットフォームエナジー徳島をオープンしたのが、2012年5月13日。そして、その後の4年間に驚くべき回数の講座を開催する。

学びの会の1年目の開催目標が150回だったんですが、結局180回開催しました。2年目の目標が180回で、それを大きく超えて280回。3年目は、県外からも講師を入れるようになって目標240回だったのが300回やりました。ギネスに申請しようかと思っています。(笑)

このあと、2016年の3月末で360回を越えようという目標に変更し、なんとすでに394回を数えている。ちなみに、これまでトータルで1250回ぐらいになる。(いずれも取材時現在)

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継続的に学ぶ仕組みづくり

事業を興し継続していくためにはさまざまな学びが必要だ。観元さんは、「商工会議所や商工会などの経済団体がされるような、すでに事業されている方向けのピンポイントのサポートではなく、もっと手前の方に着目した学びにしよう」と考えた。

サラリーマンの時から学び取っておいてもらって、将来起業するときのために準備をしてもらう必要があるなと思いました。結構、勢いで辞められる方もおられるんです、若い人で。工場勤務でお金を貯めてきたものの、スタートアップってどうしたらいいの?という人もいたりします。そこから勉強し始める人が多かったんで、それはちょっと危険だなと。

そして、回を重ねるごとに講座のテーマも多彩になってくるが、参加者の「こういう学びをしてほしい」という声を細大漏らさず聞き取り、それに応じていった結果だという。そのためには、Facebookを利用しての講師探しも厭わない。結果、それで人がつながり、ここまで広がってきた。

ぼくはこの話を聞いて嬉しくなった。全く同じことをしているからだ。ひとりでセミナーのテーマを考えだすにはやはり限界がある。まず、受講したい人に訊くのが一番だ。受講者の中には共通する課題やテーマを抱えている人が少なからずいる。そこを掘り起こす。そして、そのテーマで講師ができる人も、案外、つながりの中にいたりする。

そうして、次から次へと講師と受講者を入れ替えて開催していくうちに、お互いに教え教わる関係が生まれ、受講者同士のつながりもできてくる。コワーキングが学びの場と言われるのは、まさにそれがあるからだ。そのうち、仕事を手伝ったりするようになり、その挙句に、共同で事業を起ち上げるということも実際に起こる。

「フューチャー・コワーカーズ」の学びはそこからさらに先まで進んでいて、昨年から、東京から月に一回、ビジネスモデルイノベーション協会のコンサルタントを招聘し、週末の3〜4日で事業プロセスをしっかり学ぶカリキュラムを開講している。

いま、うちのメンバーさんに何が足りないのか、ビジネスはプロセスが結構大事なので、そこを学び取ってもらおうという趣旨です。ビジネスモデルイノベーション協会が地方でこういうことをやるのは、徳島が初の事例です。

ビジネスモデルイノベーション協会との関係は、さらに次のステップを踏む。同協会は、ビジネスモデル構築のためにビジネスモデル・キャンバスという手法を使うが、「フューチャー・コワーカーズ」ではそれをテキストとしたジュニアコンサルタントの資格講座も行っている。これも、東京以外では初めてのケースだそうだ。

そして、今では経産省の地域創業促進支援事業にも参加している。このプログラムの良い点は、地域ごとに独自のカリキュラムをアレンジして追加できることだ、と観元さんは言う。ローカルに根ざしたリアルな学びの場を提供し続けてきた人の見識だ。「フューチャー・コワーカーズ」では、このプログラムを通じて過去に6名が開業したが、国はこのプログラムの参加者の半分が開業することを目標にしている。観元さんは「国内の起業率4〜5%を欧米並みに10%に持って行きたいがまだまだ」と語る。

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もう一点、「フューチャー・コワーカーズ」の特色のひとつが、フューチャーセンターのスキームを持ち込んだことだ。ウィキペディアによれば、フューチャーセンターとは、

企業、政府、自治体などの組織が中長期的な課題の解決、オープンイノベーションによる創造を目指し、様々な関係者を幅広く集め、対話を通じて新たなアイデアや問題の解決手段を見つけ出し、相互協力の下で実践するために設けられる施設

とある。

コワーキングが地元の起業家をつなげるコミュニティだという考え方を認めた上で、観元さんは、「そこに利害関係のない人たちに集まってもらって、ダイアローグ(対話)を通じてアイデアを出していこう」という方針を立て、フューチャーセッションも活発に行なっている。

行政がやらない部分、起業の前の部分と起業した後の部分で、継続的に学ぶということを我々がやっていこうというのは、スタート当初からの目標でしたが、2年を超えたあたりで形になってきました。

学びの場から起業家を生み出し、そしてまた次につなげる、その導線はしっかり設計され実行されている。

資金調達のよき相談者

さらに観元さんは、クラウドファンディングについても新しい仕組みを作った。

うちでは、FAAVO徳島などのクラウドファンディングにも関わっているんですが、事業の傾向に合わせてファンディングも数ある中から選択する必要があると考えています。その上で、クラウドファンディングはプロモーション効果が期待できるので、クラウドファンディングありきでVCともコラボしてもいいんじゃないかと。そういう場作りをやろうとしています。

それが、四国クラウドファンディング支援協会という組織で、これには愛媛の「ダイヤモンドクロス」と香川の「サンプラット」のふたつのコワーキングも参加している。

これらのコワーキングスペースがクラウドファンディングの相談窓口となり、事業の内容を精査した上で、ファンドの起案としてプレゼンする場を提供していこうという取り組みだ。地方では、まだまだクラウドファンディングの認知度も低い。そこを改善する目的もあり、地元新聞社も注目している。

クラウドファンディングという資金調達の仕組みを啓蒙しながら、ビジネスのABCを学んできた人がいよいよ起業するという時に資金的な面でもサポートしようという、首尾一貫した体制は確かに心強い。

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企業とも「学び」でつながっていく

「地方都市では、フリーの人があまりアクティブでない分、むしろ企業に対してできることはいろいろあるんじゃないか」。昨年、いろいろやって来た中で出てきた発想で、そのひとつが、商品開発。ものづくりだ。

メーカーのアイデアだけでは偏ってしまって、自社内で考えて自己満足に陥っている。そこを変革してくれないか、という要請があるんです。そこで、コワーキングがプラットフォームを提供して、主婦とかにも入っていただいて、できれば地域にも還元できるような仕組みを考えながら、時にはクラウドファンディングでプロモーションかけてもいいし、できることっていろいろあるんですよ。それで、コワーキングももっと活性化するかなと考えています。

実は、企業の人も学びの場を知らない。こういう場所があるんだということを知ってもらおうという狙いもあった。ここへ足運んでもらえばつながってくる。いずれそういう人たちも起業を考えるだろう。その将来に向けて準備してほしい、という思いだ。

企業とコラボをやっていくと、学びの場としても別のルートができます。実は、会議室を持っていない中小企業は多いんです。企業に研修施設として貸し出すことで、Off-JTのための外部施設となります。

そうした企業が2〜3社で一緒になって研修すると、厚労省のキャリアアップ助成金なども利用できることも観元さんは教えてくれた。これを使わない手はない。

今後は、企業内研修など、今までできていなかった領域にも進出したいと語る。徹底的に学びを追求するその歩みは、さらにパワーアップしていく気配が濃厚だ。

(取材・テキスト / 伊藤富雄)

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フューチャー・コワーカーズ

徳島県 徳島市幸町3丁目13−1 第1相互ビル 2階

・ドロップイン 2時間 700円 / 以降30分毎に200円 1日1,000円
・月額会員 入会金5,000円
 プレミアム 5,000円/月
 ウィークデー 3,000円/月
 サンデー 3,000円/月

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伊藤富雄
Webビジネス・コンサルタント、コワーキング・エバンジェリスト。自らコワーカーとして業務遂行しつつ、コワーキングの啓蒙と普及に努める。2010年、日本で最初のコワーキングスペース「カフーツ」を神戸に開設。2012年、経産省認可法人「コワーキング協同組合」設立、代表理事就任。2014年「コワーキングマガジン」発行。2016年より「コワーキングツアー」を開始。著書に『グレイトフルデッドのビジネスレッスン#』(翔泳社:翻訳)など