つながりと協業を実現するコワーキングスペース「サンプラット」(高松)

各地のコワーキングスペースを巡り、日本のコワーキングの「今」を体感するコワーキングツアー。そこで見聞したコワーキングのあれやこれやを切り取ってご紹介するコラム、その9回目は、香川高松の「サンプラット」さんにおじゃまし、運営者である大西誠人さんにお話を伺いました。
(※取材 2016年4月23日)

サンプラット
〒761-0113 香川県高松市屋島西町1950番地1春日河ビル2階

求めていたのはつながりの場所

大西さんは、これまで企業の経営・会計アドバイザーとして、あるいは創業支援やビジネスモデルの策定などのコンサルタントとして15年以上事業者をサポートしてきた。その一環として、さまざまな団体が開催する異業種交流会にも積極的に関わってきたが、どうも違うなと考えて、自分でも交流会を主催するようになった。

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もっとつながりが深い交流会をやりたいと思ったんですが、なかったんですよね。ちょうど自分でも起業しようと思っていた時で、人脈作りも必要でした。ただ、単に名刺配るだけではない会にしたい、それではせっかく時間もお金も使って人と会うのにもったいないなと思いまして。それで自分で作ったんです。

この交流会は2011年の1月からはじめて、その後毎月1回、必ず開催している。そうするうちに、毎回、会議室を借りるのではなく、自らの拠点づくりの必要性を感じるようになる。勉強会の主宰運営からコワーキングスペース開設に至るルートは、いわば常道だ。

そんな折り、徳島でフューチャー・コワーカーズを運営する観元さん(次回、ご紹介の予定)と知り合う。その観元さんを通じて今度はビルオーナーともつながり、起業する人をサポートする立場でビジネスとビジネスをつなげる場所として、2015年12月12日に「サンラップ」をオープンした。 

スペースの運営にあたっては、観元さんからノウハウを伝授いただいているので助かっているとのこと。同業者がそのノウハウを共有することで互いにサポートしあうのは、まさにコワーキングの「貢献」の理念が実践されていると言ってイイと思う。こうした取り組みは、東京では早くから毎月1回、運営者のミーティングが定例的に持たれて情報交換に努めておられるし、東北でも山形、宮城、福島などから運営者が参加して3ヶ月に1回のペースで開催されている。ノウハウの共有だけでなく、共同でイベントを開催するなど、地方都市のコワーキングには、今後、こうした活動が大きな支えになるはずだ。

ちなみに、徳島の「フューチャー・コワーカーズ」とは、利用料金やセミナー参加などで会員同士の相互利用の特典がある。また、同じ趣向のイベントを双方で開催するなど、積極的に連携している。このへんは、「マツヤマンスペース」と「オオサカンスペース」のそれと同じであり、個人的には各地でこうしたスペースつながりが実現されていくことを期待している。

大西さんは、「地方では人つながりがきちっとできていないと、いろんな意味でダメなんですよね」と言う。

だから、一番初めは、ここをつながりの場所にしようと思ったんですね。自宅でもない、仕事場でもない、スタバでもない、いわばサードプレイスの次のフォースプレイスとして、仲間とつながりができる場所として。そしてそこには、4つの基本コンセプトがあるんです。

その4つとは、まず「学びでつながる」、「学びで人がつながる」、「人でビジネスがつながる」、そして「未来につながる」だ。なるほど、これはすべてのコワーキングに共通するコンセプトだ。

このコンセプトを元に、運営をはじめて4ヶ月あまり(取材時現在)。はじめてみて、その手応えはどうだったのだろう。

手応えはあります。今まではクローズドな異業種交流会だったので、香川のような狭いエリアではあまり広がりが期待できなかったんですが、コワーキングスペースを作って情報発信を続けていくと、これまでだったらこういう人とは絶対につながらないだろうなと思う人が、「サイトを見たんですけど」と来てくれたりします。で、いろいろ話しているうちに、じゃ、ここでセミナーしましょう、という流れになったりするんです。

実は、大西さんはダイレクトマーケティングのコンサルタントでもあり、情報発信はお手のもの。不断に発信し続けることで、徐々に利用者を増やしてきた。

ちなみに、「サンプラット」へは検索して来られる方が多いが、ソーシャルメディア、特にFacebookの効果はやはり大きい。たまたまシェアされた情報を見て、あ、こういうスペースがあるんだなとやって来る。ソーシャルメディアは、地域のつながりを見える化してくれるので、こういう場所を知ってもらうにはうってつけだ。そうして、地域の人とつながりが持てるのは純粋に嬉しい、と大西さんは言う。

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多様な利用者がかぶらないことのメリット

利用者のうち、起業しそうな人とすでに起業してる人の比率はほぼ半分ずつ。業種的には、コンサルタントやファシリテイターの他、SE、輸出メインのEコマース、あるいは管理栄養士など資格が必要な職種など、専門職の方が多い。案外、業種がかぶっていないのは「地方都市だとそうなりがちですね」とのこと。しかし、このかぶらないことが功を奏している。

同じ業界の人とだけだったら、視野が狭くなりがちじゃないですか。でも、ここだと逆に拡がるんですよ。ちょっとしたことですけど、「こういうことって誰に訊いたらいいんだろう」みたいなことってありますよね、やっぱり。ネットで調べてみたりするけれど、ホントのところどうなのかみたいな。例えば、自分の子供がアレルギーだとか、ですけど。そうすると、それって管理栄養士の得意ジャンルじゃないですか。(注:たまたま、インタビュー時、傍らで管理栄養士の方が利用されていた)それを雑談の中で教えてもらえるというのは、すごいメリットだと思うんですよ。他にも、ITに詳しくない人に、「Facebookってこうしたらいいですよ」みたいなこととかですね。そういう話のやり取りの中で、ビジネスアイデアが生まれる瞬間ってありますね。

雑談の中から得る情報は、むしろ、畏まったセミナーではないぶん、リアルに伝わってくる。このことは、コワーキング利用者なら誰でも経験しているのではないだろうか。「だから、コワーキングとはスペースのシェアでもあるけれど、情報のシェアでもあると考えています」という見識はまったく正しい。そして、それをメインの目的として、バランスよく運営していこうと思い始めたそうだ。

自分から情報を取りに行っている人は話が早いです。こういうことをしたいとか、私はこれが得意ですとか、これをやっていこうと思ってるんですとか、目的をしっかり持っているからですね。

実際に、異業種交流会で出会った人たちがビジネスプランに共感し、早速、「サンプラット」でプロジェクトチームを組んでやろうということが、立て続けに起こっているそうだ。ビジネスが軌道に乗るまではプロジェクトとして動かすのは合理的だし、そのための拠点をコワーキングに置くのも機動的で理にかなっている。

ちなみに、くだんの管理栄養士の方がセミナーをした時には、食育関係、飲食店のオーナー、食品会社の方、一次産業に従事する方、あるいはカイロプラクティックのインストラクターなど、栄養や食に関心のある人々が集まった。こうした多士済済な顔ぶれが一同に会する光景が見られるのも、コワーキングならではだろう。

なお、「サンプラット」では、英語読書会やセールスコピー・ライティング講座などの他、色彩心理や人材派遣に関するセミナーなど、バリエーション豊かなカリキュラムを持っている。

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チームサンプラットで協業する

大西さんは、経営のアドバイスを行っているが、コピーライターとして集客の仕事も手がけている。いわゆるマーケティングだが、起業志望の人たちの中には営業が苦手な人も多い。そういう利用者に対してコワーキングスペース運営者の立場から、マーケティングをサポートする役目も担っている。

その延長線上にあるのが、在宅ワーカーのチームだ。

ライティングって在宅でできる仕事なんですよ。デザインも在宅でできます。これらを主婦に教えて、在宅でできるチームを作っています。で、チームサンプラットとして受託して、仕事をみなさんに割り振っているんです。

チームのみなさんに指導する時は「サンプラット」の和室を使っている。ここには、子供さんを連れて来てもOKなので、お母さんがたも気軽に参加できる。主婦は忙しい。働きたいけれども、夜だけとか、土日だけとか、結構時間制限が厳しい。しかし、そういうニーズも在宅ならカバーできる。

余談だが、畳敷きの和室(または、スペース)を持つコワーキングは、どこか和やかな空気が流れている気がする。ちなみに、「サンプラット」という名は、「気軽にプラっと来てほしい」という意味も込められているそうだ。

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このチームサンプラットを活性化させていくことが今後の目標だ。

ここでビジネスを受注して、それぞれに発注して、みなさんに稼いでもらう。稼いでもらった収益から、ここの利用料金を払ってもらう。それでぼくも収益を上げる。仲間もできて、視野も広がっていく。そしてまた、ビジネスを広げていく。それが理想ですね。

コワーキングを、ただ場所を貸すだけにとどまらず、互いに仕事する人として積極的に関わっていくことで、これまでになかったスキームを生み出していくプラットフォームにすること、コワーキングの真のポテンシャルはそこにある。そしてそれは、双方にメリットをもたらし、善循環していく。

コワーキングがシェアリングエコノミーの最前線にあるのは、大西さんも言うように、ただスペースのシェアだからではなく情報のシェア、そして持てる能力を互いにシェアすることで新しい価値を生むことができる、つまり協業できる、そのためだ。

最後に大西さんが付け加えた。

婚活も、コワーキングと相性いいかなと思ってます。いずれ組み込んでいきたいんですよね。まあ、これは、地方ならではの話題かな。

いや、確かに現実味がある話だ。その日が訪れるのも、案外早いかもしれない。

(取材・テキスト / 伊藤富雄)

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サンプラット

〒761-0113 香川県高松市屋島西町1950番地1春日河ビル2階

・ドロップイン 2時間700円 2時間以降30分200円 1日利用1,000円
・プレミアム会員 オープン特別価格4,900円
・モーニング会員 オープン特別価格2,400円
・ウィークデイ会員 オープン特別価格3,400円
・トワイライト会員 オープン特別価格3,250円

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伊藤富雄
Webビジネス・コンサルタント、コワーキング・エバンジェリスト。自らコワーカーとして業務遂行しつつ、コワーキングの啓蒙と普及に努める。2010年、日本で最初のコワーキングスペース「カフーツ」を神戸に開設。2012年、経産省認可法人「コワーキング協同組合」設立、代表理事就任。2014年「コワーキングマガジン」発行。2016年より「コワーキングツアー」を開始。著書に『グレイトフルデッドのビジネスレッスン#』(翔泳社:翻訳)など