豊富なコラボメニューでスタートアップを支援するコワーキング「スタートアップカフェBASES福岡」(博多)

各地のコワーキングスペースを巡り、日本のコワーキングの「今」を体感するコワーキングツアー。そこで見聞したコワーキングのあれやこれやを切り取ってご紹介するコラム、その第2回目は、福岡は博多の「スタートアップカフェBASES福岡」におじゃまし、支配人の大部久美子さんにお話を伺いました。

スタートアップカフェBASES福岡
〒812-0013 福岡県福岡市博多区博多駅東1-12-17
オフィスニューガイア博多駅前3F

BASESがサポートするスタートアップ

創業特区としてさまざまな起業支援を活発に行なっている福岡。「スタートアップカフェBASES福岡」は、その福岡の玄関口であるJR博多駅前に位置する、コワーキングスペースとレンタルデスク(15席)、レンタルオフィス(13区画)を併せ持つ複合型のワークスペースだ。オープンスペースでコワーキングに勤しむ利用者が、いずれ起業してオフィスエリアに移動することも想定されているが、BASESの強みはむしろハードではなくソフトと言える。

運営者であるドリームアクト株式会社の川上晃博社長は経営コンサルタントであり、その経験をBASESの支援プログラムに落とし込み、体系的な経営プログラムの提供や専門家による無料相談、ビジネス交流会、ビジネスマッチングなどのメニューを揃えることで、さまざまな局面にあるスタートアップを支援している。

「ビジネスは自分の人生を豊かにするための手段」と考え、「仕事」だけではなく「学び」や「遊び」も全力で打ち込める「経営支援の基地」でありたいと思います。そして、シリコンバレーを上回る世界最高の起業家支援の仕組みづくりを目指しています。(BIZ FUKUOKA Vol.27)

そして、ただ起業ブームに踊らされるのではなく、各自の得意分野や強みを結集したチームを編成し、大手企業よりも高品質な商品やサービスを提供するのが理想としている。BASESではそれを「チームBASES」として、入居する18社を含んだ全体でのコラボを積極的に支援している。

また、BASESではオフィスエリアに入居する企業とオープンスペースのフリーランスのコワーカーとをつないで協業するケースも実際に起こっている。そのコンシェルジュの役目を負っているのが、BASESの支配人でもある大部さんだ。

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私はここの会員様のビジネスに関するご相談をお受けして、会員同士をご紹介する、いわゆるマッチングを行っています。それを期待してコワーキングスペースで仕事されているフリーランサーもおられますが、企業側にとってもメリットはあります。その上で、起業に関するご相談になると、社長のほうで対応するようにしています。

BASESの創業支援プログラムにより、入居者の中から起業に至った最近の事例では、Guidebooqがある。

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世界中の旅行者を対象に、91ヶ国語に対応して店舗ウェブサイトを表示できるサービスであり、わずか3ステップで多言語サイトが出来上がる。

ちなみにこれが、BASESの英語版ページ。トップの解説テキストの下にあるスイッチで、さまざまな言語に切り替えられる。

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元々、企業に勤めていた方が、自分のビジネスとして起ち上げるためにBASESに入居し、周到な計画のうちにローンチした。ちなみに、BASESの利用者のうち約70%がIT、ウェブ系の仕事に従事する。これは、他のコワーキングと比較すると、やや多いほうかもしれない。

さらに、BASESでは、近く、「LAUNCH BASES」というシードアクセラレーションプログラムを開始する予定だ。これがスタートすれば、更に起業家支援のプラットフォームが充実する。

余談だが、話題のAirbnb(後述)をはじめ、昨今、日本への旅行者いわゆるインバウンドを対象にした新しいビジネスがいろいろと起ち上がっている。先日おじゃました小倉の「秘密基地」でも、民泊に絡んだビジネスを模索している様子だったが、コワーキングをプラットフォームに、こうした観光関連のサービスはこれからどんどん現れる気配がする。

コラボ企画によるセミナー・イベント

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コワーキングはまた学ぶ場でもあるが、BASESでは、他の事業者とのコラボによってさまざまなセミナーやイベントを開催している。

例えば、起業家のコミュニティを運営するfestivoでは、2日間15時間で一気に学ぶ「festivo Camp Series」という講座を持っているが、BASESではその中のウェブデザイン、プログラミング、WordPress、SEOなどのカリキュラムを共同開催として提供しており、非常に人気が高い。

また、そのfestivoと大阪のコワーキングであるオオサカンスペースとの提携による「アフィリエイトJelly」も1月から始まり受講者から好評を得ている。この講義は通常オンラインで各自で受講するものだが、BASESでは月に1回、受講者が集まって合同で作業しながらリアルに学ぶ場として運営している。まさに、オープンスペースで参加者が交流できるコワーキングならではのプログラムだ。

あるいは、せどりの勉強会では毎月20名以上が一堂に会するなど、BASESは実に多種多様な利用のされ方をされているが、多くの場合、オープンスペースで特に区画割りすることなく開催している。そのせいで、他の利用者もイベントに興味を持つこともしばしばあり、それがまた参加者を増やすことにも繋がっている。これもまた、コワーキングならではの効果だ。

その他、名刺管理サービスの「 Eight」や、マニュアル作成の「Teachme Biz」など、コワーキングスペースで認知させたいと考えている企業とも連携してイベントを開催している。

そうした商品やサービスを持っている企業には、こちらからもコラボを提案しています。例えば、グループチャットとタスク管理サービスのTeamOnは、コワーキングスペースやセミナールームが 併設されているスペースから発信したいということで移って来られましたので応援しています。

新しいウェブサービスを開発提供する企業は、こういう形でコワーキングを活用するのも有効であり、かつ、コワーキングスペースにとっても利用者を増やす格好のメニューにもなる好例だろう。

Airbnbというビジネスメニュー

福岡は海外からのスタートアップの受け入れにも積極的であり、そのためのVISAも発行するなど、地方都市としてはかなり先進的な取り組みに余念がない。事実、BASESでは中国や韓国の方も利用されているため、先日も福岡市がどういう受け入れ体制が必要であるのかヒアリングに訪れたそうだ。

あくまで個人的な感想だが、福岡の関心は東京ではなくてアジアに向いていると感じる。大陸に近い地理的条件も関係しているのかもしれないが、グローバルな視点でビジネスの可能性を広げようとする気概がこの土地にはあるようだ。

ところで、BASESでは海外とのつながりの中で、ひとつ興味深いサービスも行っている。「民泊コンシェルジュサービス」がそれだが、株式会社bnbstationが提供する bnbstationの代理店として、宿泊者の本人確認、鍵の受け渡し、手荷物一時預かりサービスなど、Airbnbのシステムを一部代行している。

4月から民泊に関する法律が一部改正されるようで、大手が参入されてくると思いますが、対面して本人を確認し、鍵を引き渡すという必須事項を満足させるという点で、こういうコワーキングスペースというのは何かと機能的で便利なんですね。つまり、ここがフロント業務を請け負うわけです。

コワーキングスペースが海外からコワーカーを迎え入れる際に、宿泊先もセットになっていると利用者にとっては確かに都合が良い。先日も、香港から来られた方も、このサービスを利用したそうだ。仮に、スペース利用者でないとしても、コワーキングスペースのビジネス・メニューとしては一考の価値があるのではないだろうか。

これからBASESでやりたいこと

さて、今後、BASESで実現したいことも伺った。

ここで人と人をつなげて、知り合った人たちが話をするだけじゃなくて、実際にチームを作りたいですね。アイデアを出す人、マーケティングする人、モノを作る人、これらの人たちとビジネスを動かしたいです。そこに私もコミットしたいと思っています。

大部さん自身、構想段階にあるものではEコマースをはじめ、前述のAirbnbに絡むが、和室の提供をテーマにしたもの、あるいはガイドサービスなど、アイデアは尽きないようだ。

室内にはずっと渋いジャズがかかっていた。実は大部さん、サックスを吹かれるそうで、チャーリー・パーカーがフェイバリットだそう。ジャズはまさにコラボの音楽。ここでもそのセンスが活かされているのに違いない。

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(取材・テキスト / 伊藤富雄)

スタートアップカフェBASES福岡

〒812-0013 福岡県福岡市博多区博多駅東1-12-17
オフィスニューガイア博多駅前3F

・コワーキングスペース
平日 9:00〜22:00 土日祝 9:00〜17:00

・ビジター利用料金
平日 9:00〜17:00 1,000円 17:00〜22:00 1,500円(最大2,500円)
土日祝 9:00〜17:00 1,000円のみ

※9時から14時までなど、利用時間に合わせて6つのプランから選択もできます。

※他に、固定席専用デスク、固定区画レンタルオフィスプランもあります。

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伊藤富雄

Webビジネス・コンサルタント、コワーキング・エバンジェリスト。自らコワーカーとして業務遂行しつつ、コワーキングの啓蒙と普及に努める。2010年、日本で最初のコワーキングスペース「カフーツ」を神戸に開設。2012年、経産省認可法人「コワーキング協同組合」設立、代表理事就任。2014年「コワーキングマガジン」発行。2016年より「コワーキングツアー」を開始。著書に『グレイトフルデッドのビジネスレッスン#』(翔泳社:翻訳)など